「ボーン・アイデンティティー」あらすじと考察

「ボーン・アイデンティティー」はマッド・デイモン主演の「ボーン・シリーズ」の記念すべき第一作目です。

ボーン・アイデンティティーのあらすじ

地中海を気を失ったまま漂っている男。
発見した漁船の船長は、彼を引き揚げます。

彼は複数の銃弾を背中に受け、瀕死の状態でしたが、船長は懸命に治療にあたります。

尻に何かが埋められているのを見つけ取り出してみるとそれはマイクロチップで、チューリッヒ銀行の名と口座番号が記録されていました。

途端に彼は起き上がり、船長に襲い掛かります。
まるでかなり訓練された熟練の戦闘員のようでした。

船長はどうにかして彼を落ち着かせ、休息をとるように言い聞かせます。
彼は自分の名前さえ覚えておらず、なぜ海を漂っていたのかもわかりませんでした。

彼は上陸して、スイスのチューリッヒ銀行に向かいます。
銀行には自分名義で貸金庫があり、その中には腕時計やパスポート・クレジットカードなどと一緒に、自分の写真と「ジェイソン・ボーン」という名前が。

ここで初めて、彼は自分の名前と生まれた場所、現在住んでいるのがパリであることを知ったのです。

銀行を出て、誰かに尾行されているのを知ったボーンは、領事館に駆け込みますが、そこで何やら窓口でもめている女性と出会います。

彼女こそ、その後ボーンと行動を共にするようになる、マリー・クルーツでした。

不穏な空気を感じて、建物から出ようとしたボーンですが警察官に拘束されそうになり、記憶がないにも関わらず、警察官を倒し外のはしごを使って、逃げることに成功するのです。

道端に停めてあった車に乗り込もうとするマリーを呼び止め、「1万ドルでパリまで送ってほしい」と頼むボーン。

マリーが領事館でもめていたのは、ビザが降りなかったためで、困っていた彼女はその1万ドルを手に入れるために、ボーンの要求を聞き入れます。

こうして二人の危険な旅が始まる

ボーンは実は訓練された工作員でした。
記憶を失っていても、体が自然に動き敵を倒すことができたのもそのためです。

どうやら作戦を遂行中に誰かの裏切りのため、命を狙われるようになったと考えられましたが、実は彼はアメリカ政府が多額の資金をかけて作り上げられた、戦闘マシーンであったということ。

ボーンは自分がいかに危険な存在であるかに気づき始めながらも、マリーとの出会いによって生まれ変わろうとします。

そんなボーンのすさんだ心を、ゆっくりと解きほぐしていくのがマリーです。

敵が襲ってこないように自分から離れるように言うボーンに、マリーは付いていくことを決め、彼が自分の正体を知るため手がかりがあると思われるホテルに、自分から実行役として潜入すすることも厭わない、素晴らしい勇気の持ち主です。

そんなマリー役のフランカ・ポテンテ。

作品中で敵の目を欺くため、赤毛を真っ黒に染めキッチンバサミを使って、肩までの美しい髪を自分でばっさりと切り落とすシーンがあります。

ポテンテは実際に自分の髪を切ったそうで、作品にかける意気込みが伝わってきます。

またボーンと一緒に過ごすうちに、自分も変わろうとするマリーの心の動きさえも、このシーンの中に表現されていると感じます。

またマリーの素直な想いを受け入れようとしながらも、自分のアイデンティティーを求めさまよい続けるボーンの本能に基づく行動は、最強の戦闘員として育て上げられてしまった彼の存在の虚しさと悲しさを感じさせるものです。

他のスパイ映画「ミッションインポッシブル」「007」との比較

他の有名なスパイ映画と比べてみると、例えば「ミッションインポッシブル」のイーサン・ハントなら、信頼のおける仲間たちと組むチームのすばらしさを、また例えば「007」のジェームス・ボンドなら、誰の手も借りず一人で任務を遂行する孤高の姿を、それぞれに表現していますが、このジェイソン・ボーンはただひたすらに孤独を感じさせ、観ている方もまるで劇中のマリーと同じようにボーンに寄りそいたい気持ちにさせるのです。

ボーンは存在そのものが国家機密とされながら、彼を作り上げたことの証拠を消し去るために命を狙われるという、恐ろしい陰謀のただなかにいます。

それでもなお、自分は誰であり何の意味を持ってこの世に生きているのか、ボーンは探り続けるのです。
その中にはひとかけらの遊び心も存在しません。

そんな真剣勝負のストーリーが、まるでドキュメンタリーのようなハンディカメラでの撮影と相まって、リアリティあふれる作品となりました。

この作品のおすすめポイントは、現実味を帯びたストーリーに、観ている方が感情移入しやすいことと並んで、その中で展開されるアクションの出来の良さも挙げられます。

カーアクションはもちろんのこと、銃撃戦、敵と遭遇した時の肉体を使った接近戦、敵を欺くために練られる頭脳戦。
どれをとっても派手さはありませんが飽きさせません。

映画史に残るカーアクションシーンが爽快!

中でも、公開当時話題になったパリの街中をミニローバーで駆け巡るシーンは、車の小回りが利く操作性を活かしたもので、痛快そのものです。

パリの警察に追われてミニで階段を駆け下りるシーンは、カーアクションのテクニックとして映画史に残るものだと言っても過言ではありません。

実はこの逃走劇の前に、マリーとボーンが「タイヤの空気圧がバラバラで」「何をしても右に寄っていく」と話しているシーンがあります。

この低スペック・オンボロのミニで、ボーンは想像もつかないようなドライビング・テクニックを駆使し、警察のパトカーを巻くのです。階段も歩道もものともせずに、パリの美しい街中を駆け抜けていくシーンは、それだけでも観る価値があるものです。

しかしこのドライビング・テクニックも、ボーンが戦闘員として厳しい訓練を受けてきたから。
そこにまた悲しさを覚えるのです。

マッド・デイモンはもうジェイソン・ボーンを演じない?

マッド・デイモンはハリウッド俳優の中でも顔立ちが落ち着いている人で、これまでは地味な役柄が多かったですが、このジェイソン・ボーンはハマり役になりました。

この作品のあと、「ボーン・スプレマシー」「ボーン・アルティメイタム」「ジェイソン・ボーン」とシリーズに主演しましたが、今後はボーンを演じることはないと言っているようです。

しかしこれまでの、スマートでかっこいいだけであまりリアリティの感じられないスパイ映画とは、一線を画すボーンという男。

アクションにサスペンスの要素も入っているこのボーンシリーズは、終わってしまうには残念過ぎる作品だと思います。

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