「プーと大人になった僕」あらすじと感想

映画「プーと大人になった僕」はウォルトディズニー・ピクチャーズで、2018年に米で制作されました。

本国アメリカで先行上映された後に、日本でもウォルト・ディズニー・ジャパンの配給によって2018年の9月14日から全国ロードショーされています。

「チョコレート」や「007 慰めの報酬」などメガホンを取っているのは、社会派ドラマから娯楽作品までを手掛ける、マーク・フォースター監督です。

イギリスの児童文学作家のA.A.ミルンが、自らの息子であるクリストファー・ロビンのために執筆したジュヴェナイル文学をもとにして映像化しました。

1926年に世に送り出された「くまのプーさん」は世界中の子供たちから愛されるベストセラーとなり、ディズニーで幾度となくアニメ化されていますが実写化されたのは今回が初めてとなっています。

大人になるにつれて大切な思い出を忘れていたかつての少年が、思わぬ再会によって再び純真無垢な心を取り戻していくファンタジードラマです。

「プーと大人になった僕」あらすじ

かつては「100エーカーの森」で暮らしていたクリストファー・ロビン。
けれども数十年の時が過ぎた今ではロンドンに住んでいます。

妻との間には娘を授かり、近頃では会社からきわめて困難な課題を押し付けられて心がヘトヘト。

そんなある日のこと、行方不明になった友達を探しに来ていたプーを公園のベンチで見つけます。

魔法の扉が消えて帰れなくなっていたプーを連れて、クリストファーが向かった先は少年時代を過ごしたあの森です。

懐かしい仲間たちとも再会を果たしましたが、都会に置いてきた家族や仕事のことが頭を離れません。

結局クリストファーは、ロンドンへと戻ることになります。

変わり果てたクリストファーに寂しさを覚えたプーでしたが、彼が森の中に大切なものを忘れたことに気付いて追いかけていくのでした。

フォースを封印して自然体で挑む

心優しいプーと変わらぬ友情を貫くクリストファーロビンの役には、ユアン・マクレガーがキャスティングされています。

勤め先と家庭内のごたごたに巻き込まれながら、慌ただしい暮らしを送っている様子がリアリティー溢れていました。

自身はSFアドベンチャー「スターウォーズ」シリーズへの出演で世界的なスターとなり、近年では「美女と野獣」などのディズニー映画での活躍も続けています。

本作品の映画序盤ではクリストファーの妻であるイヴリンと一人娘のマデリンを交えて、本格的な家族ドラマを見せています。

中盤から後半にかけては人間の俳優として登場するのがマクレガーだけという異例な展開の中でも、肩の力を抜いた自然体の佇まいで臨んでいました。

あの名物キャラクターたちが現代に帰ってくる

絵本の中からそのまま飛び出してきたかのような、クマのプーさんを始めとする森の仲間たちが可愛らしかったです。

ふわふわモコモコとした質感の毛皮を身にまとって縦横無尽に転げ回っていく姿に、微妙な感情の変化を表現した仕草も面白味がありました。

木陰に腰掛けてほっとひと息ついている時にも、毛並みがサラサラと風になびいているので注目してみてください。

雨に打たれたり湖の中へと飛び込んだ時にはペシャンコになり、蜂蜜のお皿に顔を突っ込んだ際にはベタベタになったりと芸が細かいですね。

個性豊かなサブキャラクターたちも昔ながらの手作りの縫いぐるみと、最先端のアニメーションCGを組み合わせて甦っていきます。

プーの大親友である臆病な子豚のピグレットから、自信過剰な虎のティガーまで何処か憎めません。

のんびり屋でちょっぴりネガティブ思考なロバのイーヨーの尻尾が、繰り返し取れてしまうシーンには笑わされました。

スクリーンの中に焼き付く美しく広大な森

オープニングショットから映し出されていく、かつてプーとクリストファーが暮らしていた100エーカーの森の豊かな風景が美しさ溢れていました。

古木が生い茂り木漏れ日が穏やかに射し込んできて、ありとあらゆる生き物たちの生命力が満ち溢れていて癒されるはずです。

先住民族であるブリタンニアの土地を奪ってこの地に定住した、サクソン族の名前が付けられているほろ苦い由来があります。

モデルになっているのはイングランド南東部・イーストサセックス州のアッシュダウンという小さな田舎町ですが、度重なる自然災害に見舞われたせいでいま現在はその面影を残していません。

時代の流れと共に現実の世界で失われていく情景を、せめて映画の中だけでも残しておこうという強い意志を感じますね。

おとぎ話では終わらない現代の寓話

ほのぼのとしたストーリー展開の中にも、慌ただしい現代社会を生きる我々への鋭いメッセージが込められていました。

中国では政府によって「反体制的」の烙印を押されてしまい、検閲の結果公開中止にまで追い込まれてしまったというエピソードには驚かされますね。

クリストファーのいま現在の勤め先であるウインズロウ社には、ブラック企業のような不吉な影が立ち込めています。

仕事に明け暮れて家庭を顧みない夫に辟易しながら、ワンオペ育児に鬱屈とした想いを募らせていくイヴリンの姿が痛々しいです。

それぞれが自分のことで精一杯なために夫婦の時間が取れない様子など、現代人の切実な悩み事も盛り込まれていて共感できます。

永遠の少年少女たちに見て頂きたい1本

大人になることで何時しか失ってしまう、宝物について考えさせられます。

永遠に続くかに思えていた少年時代にも終わりが訪れて、クリストファーが寄宿舎に入るためにプーにサヨナラを告げる回想シーンにはホロリとさせられることでしょう。

第二次世界大戦下での従軍やロンドンでの結婚生活を通して、幼い頃の楽しかった日々を忘れていく様子には一抹の寂しさが漂っていました。

クリストファーだけではなく、誰しもが心の奥底に「100エーカーの森」のような安らぎの場所を閉じ込めながら生きているのかもしれません。

オスカー・ワイルド作「幸福な王子」から、ルイス・キャロルの永遠の名作「鏡の国のアリス」まで。

古き良きヨーロッパ諸国のジュヴナイル文学やファンタジー作品に造詣が深い方たちには、是非ともご覧になって頂きたい1本です。

かつては少年少女だった大人の皆さんにも、お子さんと一緒に童心に返って鑑賞して下さい。

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